ワークプレイス改善を進める富士市、
市庁舎で4つの課がフリーアドレスを導入。
モデルオフィスとしての役割と課を超えた交流に期待
業務の効率化や市民サービスの向上などを図るためにワークプレイス改善を進めている富士市。その取組の一つとして、令和6年3月4日より市庁舎5階南側の産業交流部の一部フロアにフリーアドレス ※ を導入しました。4つの課が集まり開設されるまでの経緯や、ペーパーレス化をセットで進めた理由、これから期待することなどについて、富士市役所でDX・中小企業支援担当を行っている松葉剛哲が、設計から施工までを担当したコニカミノルタジャパン株式会社マーケティングサービス事業部の、中川武司さん、又吉大軌さんにお話を伺いました。
※固定席を持たずに好きな席で働くワークスタイルのこと
富士市でテレワークを推進する5年計画を進行中
令和2年8月に「デジタル変革宣言」を発表した富士市。また、国も令和3年に「デジタルの力で地方の課題解決を目指す」という内容の「デジタル田園都市国家構想」を発表しました。富士市ではテレワーク先進都市への行程として、市内企業にテレワークを推進することと首都圏から企業やワーカーを呼びこむための施策を盛り込んだ「富士市テレワーク推進ロードマップ」を作成し、令和3年3月に動き出しました。
2年越しで実現した、市役所内のフリーアドレス化
テレワークという言葉には、在宅ワークだけではなく、サテライトオフィスやコワーキングスペースでの仕事だったり、DXやIT機器を使って仕事を効率化していくという意味も含まれています。
自分達が率先してテレワーク及びワークプレイスの改善を実践するため、産業政策課でフリーアドレスを取り入れようと声をあげたのが2年前。しかし、単独の課では予算も限られている中での実現は難しく、そこから「産業交流部産業政策課、産業支援課、商業労政課、交流観光課」の4課46名をまとめ、計画の規模を大きくしながら2年越しでフリーアドレスが実現しました。
4課の若手職員が中心となりプロジェクトを進行
松葉:今まで別々のフロアで業務を進めてきた4課がまとまった理由は、このフロアの来庁者の多くが事業者という共通点があったからです。来庁者がフリーアドレスを実際に見て、うちでもやってみたいと思ってほしい。また市が率先して実施することで、結果としてテレワーク先進都市に近づくのではという想いもあり、モデルオフィスも兼ねて実現することになりました。
プロジェクトメンバーを集め動き出したのが令和5年5月。若手職員を中心に、ワークショップやアンケートを通して意見を集め、まとめていきました。
松葉:東京の企業の視察なども行い、どんな職場にしたいのか若手の声を拾いながら作りました。キレイなオフィスのような受付も、靴を脱いで利用する一段上がったスペースも、若手から出てきた意見を採用して取り入れました。
施工実績が豊富なコニカミノルタジャパン。富士市と作り上げたフリーアドレス
理想の職場案が固まってから公募型プロポーザルを行い、コニカミノルタジャパン株式会社がデザイン設計から施工まで担うことが決まりました。自社でもフリーアドレスを導入している会社です。
中川さん:これまで年間100件ペースで10年以上、トータル1000件以上のフリーアドレス化に携わってきました。自治体としては富士市が初めての案件となります。
又吉さん:ワークショップやアンケートから希望の形がすでに見えていたので、そこから富士市の要望を聴き、提案をしながら一緒に作り上げていきました。
アンケートよりも重要なのはインプット。「こういう働き方をするとこういういいことがある」ということを伝えることでベクトルが揃ってくると言います。時に、フリーアドレスにすることが目的となり失敗することもあるそうです。
又吉さん:フリーアドレスは目的ではなく手段。単にデザイン・施工をするだけではなく富士市さんと一緒に作り上げたということが重要になります。
中川さん:フリーアドレスはきっかけ、自分達で働き方を変える必要があります。
必要不可欠なペーパーレス化で書類の量は三分の一に
実現するために必要な作業の一つにペーパーレス化があるといいます。
松葉:フリーアドレスとペーパーレス化はセットです。作業が大変だからやりたくないなどの反対意見が出やすい部分でしたが、意見をまとめ期限を決めて取り組んだところ、ペーパーレス化がどんどんと進んでいきました。
ペーパーレス化も働き方改革の1つ。どこでも書類が見れるとなれば、テレワークもしやすくなります。また、スペースを確保するためにも、書類と収納するキャビネットを減らす必要がありました。
松葉:いる・いらないの選別から始めましたが、確認してみるといらない書類が多数でした。分けてから必要なものだけをすべてPDF化、その後データだけあれば良いものも処分して、紙で必要な分だけを残しました。結果として、書類の量は以前の三分の一程度まで減りました。
PDFにした書類は、OCRで文字認識と検索ができるので探しやすくなりました。ポスターも電子化して、デジタルサイネージで表示しています。
仕事の生産性を高める仕組みで、機能的な働き方が可能に
エリアを「市民に分かりやすい受付/待合スペース」「業務にあわせて働き方を選べる職員執務スペース」「市民と活発な議論ができる共創スペース」の3つに区分けすることで、その日の仕事内容や予定によって変化させることのできる、機能的な働き方が可能となりました。
共創スペースは、ミーティングや打合せの規模によりテーブルの配置をフレキシブルに変えられるようになっています。自由にテーブルや椅子を移動させるには、床がフルフラットでないと大変。そのため、全体の床を7cm上げて床下に空間を設け、その下に電源やネットワーク回線などを通すOAフロア仕様にしています。
松葉:交流する機会があまりなかった4課が一緒になることで、新たな出会いや気づきが生まれ、発展が見込めると期待しています。
職員執務スペースには、仕事に集中したい人用の個人ブースやオンラインミーティングでも周りを気にする必要のない個室ブースだけでなく、立ったまま仕事をしたり、座った状態でも立った人と同じ目線で話ができるハイテーブル・ハイチェア仕様のワークスペースや、向かい合って話し合いながらワークができるソファ席も。
3つのエリアが交わる場所にあるコピー機やシュレッダーが集められたスペースには、作業をする人が集まり他部署間との交流や偶発的なコミュニケーションが生まれる可能性があるため、その場で座って会話が始まってもいいように電動昇降テーブルを置き、マグネットスペース ※ が作られました。
※自然と人が集まるようなスペース
他にも細部にわたり工夫が施されています。経験が豊富な施工会社だからこそ、職員の声を反映して、至るところに細やかな心配りができており、見ているだけでもワクワクするフロアになっています。
職場の環境や働き方を重要視すると言われる若い世代からの支持が厚い、フリーアドレス。ドラマやYouTubeで描かれるような最新のオフィスが富士市役所にもできました。
フリーアドレス化を検討する際は、モデルオフィスとしての機能も備えている富士市役所5階南側のフロアをご覧いただき、産業支援課までご相談ください。