富士市を中小企業の力で元気なまちへ
~人手不足のときこそDXの活用~

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富士市はものづくりのまちです。中小製造業が富士市の産業を長年支えてきました。しかしながら、近年の中小製造業は人材採用に苦慮しており、人手不足となっています。その対応策とDX導入を率先して行う企業が富士市にあります。

ダイワエムティ株式会社は前身の大和木型製作所の創業から100年以上の歴史をもち、富士市で自動車関連の機械や部品の製造を行う中小企業です。現在、代表取締役を務めるのは和久田惠子社長です。和久田社長は富士商工会議所の副会頭や富士市教育委員としても活躍しています。

人が全く採用できない時代へ

中小製造業はここ数年本当に人材の採用に苦労しています。これは弊社だけでなく、市内の多くの企業が同じ状況だと聞いています。富士市の人口も少なくなる中で、今後もこの状況が続くことは間違いないと思います。「採用に苦労している時代」から、「全く採用できない時代」へと状況はさらに変化していると言っても言い過ぎではなくなってきています。
しかし、それでも製造現場からは人が足りないとの声があがってきます。
そのようなときこそ、DXを導入すべきと考えています。

現場の人手不足をDXで代用

例えば弊社の製造現場では、ありがたいことに受注が増え、検品を行う人を増やしてほしいとの要望がありました。これまでであれば、業務量が増えているため、それに見合った人材を採用して増員していました。
しかし、今は募集しても応募がなく、採用に至らない状況です。
そのため、最近では現場から人が欲しいとの声があがった場合には、なぜ人が欲しいのか、人間でしかできない業務なのかについて考えさせるようにしています。
今回の検品作業であれば、AIの活用といったDXの導入も十分に考えられます。
現場の人手不足に対しては、DXで代用できる場合もあるのです。

コストを圧縮

DXを導入する場合にはコストがかかります。しかし人材の採用もそれは同じです。特に人材採用の場合は、広告費用や人材会社への手数料など、年々上がっていく賃金以外の部分のコストも大きくなってきています。
しかし、DXの導入の場合は導入費用と稼働費用のみで済みます。さらに、設備への投資でもあるため、償却されていき、年々のコストは下がると考えることもできます。また、リース契約という手もあり、コストを分散させることもできます。
人材採用の場合、雇ってみないとその人の本当のスキルはわからず、コストに見合った働きをしてもらえるか未知数です。しかし、DX導入の場合は初めから導入のメリットが見えていることが多いです。
そのため、人材採用よりもDX導入の方が、メリットに対するコストを圧縮できます。

Beパレットふじの活用

DX導入の際に、さまざまツールがあり、素人ではどれを選ぶことが一番効果的かわからないことがあります。
そのため、専門家を通したアドバイスをもらう必要があると考えています。
弊社の場合は富士市地域産業支援センター(Beパレットふじ)を通して、静岡県よろず支援拠点の長谷川コーディネーターにアドバイスをいただいています。
DX導入に躊躇されている中小企業も多いと思われますが、弊社のようにBeパレットふじを活用することで、適切なアドバイスがいただけます。Beパレットふじでの相談は無料で何度でも活用できるため、中小企業にとっては大変心強いです。

働きやすくなる職場へ

弊社は職場の一部部署に市の補助金を活用してフリーアドレスを導入しました。
フリーアドレスを導入したことで、社員の働き方の自由度が増しました。例えば、設計部署で上司に相談しつつ仕事をする必要がある場合は、上司の近くの席で仕事を行います。一方で設計に集中したい場合は半個室のブースに入ります。フリーアドレスはその日の業務による職場の使い分けができ、生産性の向上と社員のストレス対策にもなります。
また、弊社はテレワークも導入しております。家庭の事情でテレワークを行いたいと申出があれば、可能な限り認めています。
このようなフリーアドレスとテレワークの導入は、離職防止にもつながっていると感じています。

若者のリクルーティング

2月に開催されたものづくり力交流フェアにおいて、弊社は子ども向けの展示を積極的に行いました。ものづくり力交流フェアは企業間の交流イベントである一方で、一般の市民が多く来場します。特に2日目(土曜日)は親子連れが多いことは前回の経験からわかっていたので、ものづくり体験やオリジナルガチャガチャを用意しました。
これは子どもとその親に弊社のことを知ってもらいたいからです。大きくなって就職活動をするときに、弊社の名前を思い出してもらえたら最高です。ガチャガチャに並んでいる親子に弊社の説明をたくさんさせていただきました。

弊社のブースに予想以上の来場者があり、リクルーティングの場としても存分に活用させていただきました。ものづくり力交流フェアはとてもよいイベントです。

元気なまちにしていきたい

富士市だけに限った話ではありませんが、多くの中小企業が廃業の危機にあります。それも経営上の問題ではなく、人手不足という理由によるものも多い状況です。
黒字の廃業はもったいないです。中小企業はそれぞれが独自の技術を持っています。それを絶やしてはなりません。「俺の代で会社は終わりだから」という言葉を経営者仲間からもよく聞きます。そういった経営者は、人手不足という課題を乗り越える必要があることに気づいてはいても、腰をなかなか上げてはくれません。DXを活用して、人手不足を乗り越えようと腰を上げる経営者を増やしていかねばなりません。もう一度、私たち中小企業の技術が富士市の産業を支えてきたことを再認識する必要があります。経営者が高齢で跡継ぎがいない場合にはM&Aの活用もありだと思っています。そこまでしてでも、中小企業の技術は残していく必要があるのです。

事業所の減少は子どもたちの就職の場の減少でもあります。元気なまちにしていくために、このような負のスパイラルを止める必要があります。