副業人材と共に会社を創り上げる秘訣

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会社に所属しながら本業とは別の仕事をする「副業」が話題になっています。
企業での採用はハードルが高いと思われがちな副業人材ですが、主に都心部の優秀な人材を地方企業に役立てることは、事業の拡大にもつながる重要な取り組みです。
今回は富士市天間で製造を手掛ける西山工業株式会社 代表取締役社長の小林公一さんに、経営者の目線も踏まえた、副業人材の活用のポイントや利点を伺いました。

西山工業株式会社 代表取締役社長 小林公一さん

会社の概要をお聞かせください。

当社は1960年に設立し、今年で創立64年目となります。当初は冷蔵庫や冷水器を製造するOEM(委託者のブランドで製品を生産すること)の会社でしたが、現在は温熱機器の製造など商品の幅を広げるだけではなく、自社ブランドの開発からODM(委託者のブランドで製品を設計・生産すること)まで行っています。また、自社内でのプレス板金加部門、電子基板製造部門まで、自己完結一貫生産型(ワンストップサービス)の製造体制を整えています。

副業人材を活用したきっかけを教えてください。

おかげさまで冷水器のシェアは業界1位ですが、どれだけ優れた製造技術を保持していても、市場に求められる製品を開発し続けることに対しての課題を抱えていました。
そんな時、知人からの勧めで副業人材の活用を決めました。
採用前の資料作りに大変苦労しましたが、頭の中だけで考えていることを言語化したことで、自社の課題が具体的に認識できたり、考える癖がついたことは良かったですね。

副業人材を採用するまでの流れをお聞かせください。

募集では10名ほど応募がありました。驚きだったのはプロポーザルの段階で応募者から提案書をもらったことです。事前の話し合いは1回だけだったため、全てが思い描いていたような提案書ではなかったですが、当社と共に会社を創り上げていきたいという意気込みや熱意が感じられました。副業人材の方とは物理的な距離は離れていますが、心の距離は常に近かったように思えました。
採用した方は、都内企業に勤めながら副業活動をしているマーケターと製造コンサルタントの2名です。採用が決定したあとも一方通行な指導ではなく当社とワンチームとなり活動してくれました。

副業人材に求めたこと、活用の利点をお聞かせください。

副業人材に求めた条件は、売れる商品を作るための事業モデルの構築と組織作りについての課題解決型のコンサルティングです。実際に提案された方法はコーチングを軸としたものでした。単に答えをくれるのではなく、自分たちで問題を解決するように導くやり方です。
例えば社員には経営を自分ごととして捉えてもらうための事業戦略会議への参加や、代表の私による会議内容の作成を勧められました。初めは静かだった社員も、副業人材からの肯定的な言葉とポストイット方式によって意見がどんどん出てきました。前向きな発言をしやすい環境を作るため心理的安全性が担保される会議の「掟」を作成するなど、皆で議論して会社を創り上げていこうという意識が生まれたことは良い傾向だったと思います。

具体的にはどのようなことが決まりましたか?

真の中堅企業を目指すため事業を“N1プロジェクト”を銘打ち、会社の方向性を定めました。具体的には〈1〉自社が世の中に存在する意義や提供するべき価値は何であるのかを問うブランドストーリーの作成、〈2〉ビジョン(目指すべき理想の姿)の作成、〈3〉事業展開する上での目標・方針作り、〈4〉どの顧客にどのような価値をどのような方法で提供するのかという事業ドメインの再定義、〈5〉新商品のアイディア出しです。
事業の実施期間はおよそ半年間に及びました。副業人材とは当社での月1回の対面と必要に応じてオンラインで話し合いをしましたが、疑問点はすぐに電話で聞いてくれるなど親身になって動いてくれました。

副業人材を検討中の方にアドバイスをお願いします。

キーワードは共創です。私は副業人材に対して解決方法を求めていましたが、今回の体験を通して会社を共に創り上げる存在だという認識にシフトしました。そのため依頼するまでの心構えとして、相談したい内容をまとめてから伝えること、内容は限定したものにするとよいと思います。何が課題なのかを自分たちで考える癖をつけておくことで主体性が生まれますし、「どうしたら良いですか」よりも「こうしたいのですが」と相談するほうが、相手が動きやすいです。
会議をする際は「掟」の作成をおすすめします。会議の司会は都度変わることから、資料作成のポイントや出席者皆が平等で発言権は全員にあるといった心理的安全性への配慮をまとめた指標です。誰でも話やすい職場づくりは重要です。
これらの前向きなアクションが生まれた背景には、副業人材の存在が大きかったです。当社の場合は事業戦略だけではなく、経営の根幹となる部分まで相談させてもらいました。お願いして良かったと実感しています。