【コラム(第2回)】富士市で進めるDX・テレワーク
常葉大学 経営学部経営学科 小豆川 裕子教授
【コラム】「富士市で進めるDX・テレワーク」第2回目は、富士市のDX・テレワークの課題と解決策について、解説します。
富士市の産業とDX・テレワーク
2018年、経済産業省「DXレポート」の公表以降、デジタル革新による生産性向上や業務効率化や働き方改革の取り組みが始まっています。
富士市は明治以降全国でも有数の「紙のまち」として知られ、その後「輸送機器関連」「化学工業」等の進出があり、主要産業は製造業となっています。
従業員ベースでみた現在の内訳をみるとは、「パルプ・紙」「輸送機械」「食料品」で半数以上を占め、「化学工業」「生産用機械」「プラスティック製品」が続きます。
こうした製造業におけるDXやテレワークは認知や理解が未だ進んでおらず、導入メリットや活用するイメージがなかなか持ちにくいのではないでしょうか。
中小企業のDX推進の課題
独立行政法人中小企業基盤整備機構が2022年3月に実施した「中小企業のDX 推進に関するアンケート調査報告書」によると、DXを必要と認識している(「必要だと思う」「ある程度必要だと思う」)企業は約8割を占める一方、DXの推進・検討に着手済みの企業は2割超にとどまっています。現在の取り組み内容で最も多いのは、「ホームページの作成」で約5割を占め、続いて「営業活動・会議のオンライン化」「顧客データの一元管理」が続きます。そしてDXに取組む企業では、成果がでている(「成果が出ている」「ある程度出ている」企業は8割超になっています。本気で取り組んだ企業は、着実に成果を残している様子がうかがえます。
先進事例における取組み
表1は、2023年1月26日に開催された富士市DX促進セミナーにおける製造業3社のDX・テレワークの取組み事例です。セミナー当日はオンライン含めて144名の参加者があり、地元企業の経営者、担当者の関心の高さがうかがえました。
これらは従業員100名以下の製造業ですが、経営課題解決のニーズの高い分野に取り組み、意欲ある経営者と優秀な従業員によって、着実に成果を積み上げています。
新橋製紙株式会社は、外勤の営業環境の整備、リモート環境の導入、定型業務自動化と業務用チャット、Web会議等のコミュニケーション変革を行いました。その結果、一人当たりの売上増、大幅な労働時間の短縮を実現しています。
五十鈴中央株式会社は、部門ごとに取り組みました。スマートOPチームは、RPA導入、定型業務自動化、生産チームは、システム開発と導入により業務の可視化、営業管理チームは、ペーパーレスによる営業管理業務の効率化に取り組みました。その結果、事務労働時間180時間/月の削減(2021年度比)、業務数116件の削減、無災害日数1,880日を継続、ペーパーレスによって、印刷が19%削減されました。
株式会社ダイワ・エム・ティにおいても部門ごとに取り組みました。総務部は在宅勤務による業務継続、ワークライフバランスの実現、営業部はPC・タブレット活用したモバイルワークで営業の効率化、製造部はWeb会議による業務継続、CAD設計部では、接続できる環境を整備し、BCP対応と情報漏洩リスク低減の同時実現を目指しました。その結果、利益率が30ポイントアップ、出張経費も84.3%の削減を達成しました。
中小企業のDX推進のポイント
中小企業がDX推進であげる課題に、情報不足で成果のイメージが見えにくいこと、デジタル化、DXに取り組む人材が不足していること、さらに投資予算の確保が難しいこと、などがあげられています。
こうした状況を踏まえ、Bパレットふじ(富士市地域産業支援センター)では、地域内産業支援機関(富士商工会議所、富士市商工会、富士信用金庫)との連携によって、IT・DX関連相談日を設定し、気軽な経営相談を行えるようになっています。
また、富士市と連携協定を締結したコニカミノルタ静岡株式会社は、テレワーク実践会議室を活用して、Web会議、テレワーク関連機器のデモを行ったり、テレワーク、DXを活用した業務効率化、働き方改革の相談及び支援を行っています。
投資予算の確保については、令和5年度富士市デジタル販路開拓支援補助金など、さまざまな取り組みを行っています。
さらに、富士市内における事業者のDX化を推進する為に、事業の見直しや各種の調査・分析、実証実験等を通して、DXを活用した街の活性化にも着手しています。
少しずつですが、富士地域の事業者のDX・テレワーク推進に向けた新たな挑戦、そして、それを実現する環境整備がはじまっています。
第3回のコラムでは、富士市におけるワーケーションと移住促進について解説します。