富士市のデジタル人材を育成~子ども向けプログラミング体験会~

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富士市は製紙業をはじめとした「ものづくりのまち」です。ものづくりには様々なデジタル技術が活用されており、デジタルを扱える人材育成を進めています。

2024年2月25日と3月20日に、「宇宙探査ローバーを作ろう!」と題した子ども向けプログラミング体験会を開催しました。二日間で小学2年生から中学2年生までの100人の子どもたちが参加してくれました。ゲームの世界ではなく、物理的にものを動かすという現実の世界でのプログラミングを学びました。

講師を務めていただいたのは、全国各地で科学教育、ICT人材の育成の活動をしている一般社団法人e-kagaku国際科学教育協会代表の北原達正さんです。

本物で経験を積むことが大事

現在、日本ではICT人材が不足しています。しかし企業からのニーズはとても高いです。それは現代の仕事にはデジタルを活用していない仕事は一つもないからです。何かしらパソコンを活用していて、必ずデータを扱っています。そのため、政府はGIGAスクール構想として小中学校にタブレットを一人1台配布しましたが、真の需要にはあっていません。タブレットをメインで仕事をしている企業は世界中探してもないのです。本当にICT人材を育成したいのであれば、センサーやカメラといった実用されているツールを、とにかく触って経験を積むことが必要なのです。

日本の教育の遅れ

例えばシンガポールやオーストラリアの授業では、カメラやセンサーを用いた授業を学校で行っています。しかし、日本ではいまだに豆電球や乾電池を用いた授業を行っています。また入試には「実験」という実技の科目が国外では設定されています。一方で日本では理科の試験において紙面上で答えさせるだけです。どちらが実用的かは一目瞭然です。
デジタル分野における日本の教育は、国外に比べて圧倒的に遅れています。同年代の子が、国外ではできていることが、日本の子は全くできないことも多いです。ただ、これは日本の子が「できない」ではなく、「やったことがない」という理由のためです。
日本の子も早期にデジタルに触れる機会を与える必要があります。

大人と同じルールで

小学4年生の10歳の子がプロ野球選手になりたいといった場合、あとどれくらいの時間がありますか。答えは8年です。18歳になるまでに、150km/hのボールを投げることができたり、逆にそのボールをホームランにすることができないと現実的には難しいのです。ここで重要なのは大人のレベルで考えることです。オリンピックの金メダリストには10代前半の子もたくさんいます。本当のトップになるためには、子どものころから大人と同じルールの中で経験を積んでいく必要があります。科学もそれと同じで、大人と同じ道具(ソフトやツール)を早くから触ることでどんどんと上達していきます。そうすることで、例え子どもであっても大人に勝てるチャンスは十分にあります。

数字を読めることの大切さ

科学者の先輩として、数字に強くなることを大切にしてほしいと子どもたちには伝えています。数字が読めるとは計算が早いことではありません。その数字の主語はなにで、その数字はどのような結果を生み出すのか。それらのことをイメージできることこそが数字を読めるということです。また、結果がイメージと違って失敗となってしまうことも多いです。失敗という結果にとどまるのではなく、イメージと何が違って、なぜそうなったかの分析ができることが本当に大事なことです。
これは決して科学の世界の話だけではありません。世の中はデータで動いています。文系だろうと理系だろうと、将来就く仕事でデータを扱えることは必須だと言えます。

国外に仕事を持っていかれている

あまり知られていませんが、ベトナムは第二言語を日本語としている学校も多いです。これはなぜかというと、日本での給料はベトナムの何倍ももらえます。また、幼いころからの教育でデジタル技術やデータを扱う力も備わっています。そのため、日本国内の仕事も国外から来ている人に取られているのが現状です。
日本の電機メーカーの大手は新卒でも能力で1,000万円を年収として用意している時代です。さらにいうと、アメリカのシリコンバレーで同じ仕事に就いたならば、さらに10倍の給料がもらえます。真剣にデジタル技術の習得に取組むことは、将来の生活に直結するのです。
デジタル技術を当たり前に扱える人材の育成は、遊びではなく真剣に取り組み、将来を見据える必要があります。

子どもたちに伝えたいこと

どんなことでもマナーとあいさつは大切にしてほしいです。これもスポーツでも科学でもともに共通することです。挨拶や返事の声が小さい時に「もう一度」と学校で言ってくれるのは日本だけです。世界ではそのような配慮はしてくれません。配慮してくれないどころか、その後無視されます。冷たいと思うかもしれませんが、グローバルとはそのような世界です。
なぜこのような話をするかというと、科学は時として人殺しの道具となります。戦争には最新の科学の力が存分に使われています。また、日常の中の例でいうと、薬や車の自動運転にも科学が使われています。その時に薬剤の配合量やプログラムを少しでも間違えれば、便利なものどころか人殺しの道具となってしまう可能性もあります。科学を扱う以上、正しい知識と扱い方を常に考えてほしいのです。
その基礎がマナーだと考えています。
同年代で世界で活躍している子がたくさんいます。自らチャンスをつかんで、デジタル技術を学んでいってほしいと思います。

e-kagaku国際科学教育協会の活動についてはこちらをご覧ください。